不整脈がある人は、どきどきする。脈がとぶ。と言われる方が多いのですが、なかにはまったく無症状の人から、失神、心不全、突然死が不整脈の症状である場合もあります。
不整脈には、“放置してよい良性の不整脈”と、“治療を要する不整脈”とがあります。
不整脈がある・なしよりも、どんな種類の不整脈があり、治療が必要であるかどうかが重要です。
不整脈とは?
不整脈とは正常でない脈のことです。
では正常な脈とはどのような脈でしょうか?
心臓は全身へ血液を送るポンプとして働いています。
そして心臓は心筋という筋肉でできており、心筋が収縮すると全身へ血液が送り出されます。
また心臓には右心房・左心房・右心室・左心室という4つの部屋があり、これらの部屋がばらばらに収縮すると、うまく全身へ血液を送り出すことができないので、順序よく収縮する必要があります。
右心房には心臓全体の収縮をはじめる最初に電気的刺激をおこす洞結節という場所あります。
洞結節から起こった電気的刺激が左右の心房を興奮させ心房の収縮が起こります。
心房の電気的刺激は房室結節のみを通過して心室を興奮させ、心室の収縮が起こります。
そして左心室が収縮すると大動脈に血液が送り出されます。
そして我々は全身へ送り出される血液を脈として認識することができます。
正常な脈とは、正常の脈拍数で洞結節の電気的刺激が正常の経路(刺激伝導系といいます)を通るものです。
脈拍数の正常は60~100回/分です。
これ以外の脈はすべて不整脈となります。
不整脈を調べるためには?
不整脈の診断にはまず心電図を調べます。
健康診断でも行われており、脈の早さ、心房、心室の電気的興奮を記録することができます。正常の脈なのか、不整脈なのか、どの種類の不整脈なのかを調べることができます。 また時々しか現れない、24時間の心電図検査(ホルター心電図といいます)があります。
さらに電気生理学的検査といって、電極の付いたカテーテルを心臓へ挿入し、刺激を人工的に与えて、不整脈を誘発し、心臓のどの部位に異常があり、心臓内を どのように伝導しているかを調べ、不整脈の種類、原因を正確に診断することができるものがあります。
ワンポイント アドバイス!
不整脈は他の心臓病、全身の病気の症状であることがあります。
不整脈を起こし得る他の異常がないかを調べることも重要です。
不整脈の治療にはどのようなものがあるでしょうか?
現在は不整脈に対する治療は大変進歩しております。
今までの不整脈の治療は薬のみであったり、外科的手術が必要であることが多かったのですが、現在ではペースメーカー、高周波カテーテルアブレーション、植え込み型除細動器などの新しい治療方法が安全に使用可能となってきています。
ペースメーカーとは?
脈が遅くなってしまう不整脈に用いられます。脈が遅くなると、ふらつき、失神、心不全などを起こしたり、極端に脈が遅くなれば死んでしまうこともあります。
ペースメーカーを植え込むと、脈が遅くなった時、脈を補ってくれます。
高周波カテーテルアブレーションとは?
脈が早くなってしまう不整脈に用いられます。脈が早くなると動悸を感じ、日常生活が快適に送れなくなったり、心不全をおこしたり、極端に脈が早くなってしまうと、心臓はうまく全身に血液を送ることができず失神したり、突然死の原因となることがあります。
これらの原因となる異常を調べ、カテーテルを用いて高周波による通電をして心臓のごく限られた異常部位に熱を発生させて焼灼することにより不整脈の根治をはかります。
治療が成功すれば二度とその不整脈が起こることはなく治ってしまいます。したがってお薬を服用する必要もなくなります。
植込み型除細動器とは?
心室頻拍(心室細動)に用いられます。心室頻拍とは、心室から起こる不整脈によって脈が早くなりすぎるために心臓が全身へ血液を送ることができなくなる不 整脈です。脳へも十分な血液が送られず、極端な場合にはこの不整脈が起こってから数分で失神し、やがては死に至ります。病院内で心室頻拍がおこれば心肺蘇 生を行い、電気ショックを与え、心室頻拍を停止させます。しかし、病院外で心室頻拍がおこると適切な処置ができず死亡することもあります。植え込み型除細 動器は心室頻拍がおこると自動的に電気ショックをおこない、突然死を予防することができるのです(失神は完全には予防できません)。
不整脈があるのではないかと思われる方へ
動悸などを自覚し自分は不整脈があるのではないかと思われる方の多くは、不整脈はあるものの治療を必要としない良性の不整脈である場合が多いのです。 しかし、重篤で治療を必要とする不整脈であったり、その不整脈が弁膜症、虚血性心疾患、心筋症など、他の心臓病の症状である場合もあります。 さらに、治療を必要としない良性の不整脈であるにもかかわらず、自分は不整脈でいつどうなるかわからないと思いこみ、楽しく日常生活をおくることができな い方もおられます。 不整脈があるのではないかと思われる方は、ぜひ循環器専門医にかかられることをおすすめします。