Research Activity

研究紹介

不整脈グループ

  • 2021.06.1 |

1) 心房細動の機序の解明と至適な治療法の確立

心房細動は主に肺静脈を起源とする異常興奮により引き起こされることが報告されており、肺静脈隔離術が特に発作性心房細動に対して有効であることが示されている。我々はこれまでに心房細動の発症の基となる肺静脈内の興奮伝播がどのような機序によるのかをEnSite arrayカテーテルを用いたNon-contact mapping systemで解析を行なってきたKiyma T, Kanazawa H, et al. J Cardiol. 2020; 75: 673-681.。その一方で心房細動は発作を繰り返すことにより心房筋のリモデリングを来たし持続性へと移行していくことが示されており、持続性心房細動では、肺静脈隔離術のみの治療では不十分であることが示されている。しかしながらこれに対する追加治療としては、非肺静脈起源のトリガーの誘発、左房天蓋部や僧帽弁輪・三尖弁輪など線状焼灼、左房後壁の隔離、電位(CFAE)を指標としたアブレーション、rotational activityへのアブレーションなど、さまざまな手法がこれまで行われてきたが、患者個人個人で不整脈の機序が異なるため、肺静脈隔離ほどの普遍的な治療方法の確立には至っていない。当院ではこれら心房細動に対するカテーテル治療を患者個別の病態に応じて行い、EnSite、CARTO、RHYTHMIAという3つの最先端のマッピングシステムを導入し、治療成績の向上に努めている。

(Kiyma T, Kanazawa H, et al. J Cardiol. 2020; 75: 673-681.)

EnSite System, ExTRa mapping systemを用いたrotational activityへのアブレーション

CARTO systemのVector Directionを用い透視削減を追求した肺静脈隔離術

(Hoshiyama T et al. Circ Arrhythm Electrophysiol. 2019;12:e07320.)

RHYTHMIA systemを用いたPV isolationとnon-PV fociアブレーション

2) 心房細動に関連する因子の検討

心房細動の背景は複雑であり、飲酒や肥満の関与、睡眠時無呼吸症候群、自律神経、遺伝子など様々なものがあげられている。我々はこれまでに心臓周囲脂肪組織が多いと電位の複雑化(CFAE)が進行することKanazawa H, et al. Int J Cardiol 2014;174:557–564.)、心房伝導時間の延長をきたすと心房細動アブレーション後の再発が多いこと(Kanemaru Y, et al. Int J Cardiol 2020;200:147-153.)、心房細動調律では血管内皮機能が低下することなど心房細動の病態生理に関しても研究報告をしてきた。現在も遺伝的背景や心筋線維化などを心房細動の病態に関連した検討を行っている。

(Kanazawa H, et al. Int J Cardiol 2014;174:557–564.)

(Kanemaru Y, et al. Int J Cardiol 2020;200:147-153.)

3) 心房細動アブレーションにより引き起こされる食道潰瘍の予測因子と予防に関する検討

心房細動に対する治療の基本は両側肺静脈隔離であるが、左心房の後方には食道が接して走行しており、通電により食道に傷害を引き起こす可能性が指摘されている。これにより食道左房瘻が引き起こされ重篤な場合死亡に至る症例も報告されている。しかしながら現在のところ食道損傷を予測する正確な因子は明らかにされていない。これまで当科ではCTを用いた左房肺静脈間の距離がこの予測に有用であることを報告しているが(Ito et al. Journal of Cardiology 2018;72:480-487)、食道温モニタリングを行ったり通電の方法を変えたりなど、各施設で様々な方法が試みられているものの未だに意見は一致していない。現在更なる解析を進め、より安全なアブレーション治療の検討を行っているところである。

(Ito et al. Journal of Cardiology 2018;72:480-487)

4) T-TAS(Total thrombus-formation analysis system)を用いた心房細動カテーテルアブレーション周術期の至適抗凝固療法の確立、およびデバイス植え込み周術期の至適抗凝固療法の確立

昨今、心房細動症例では新規経口抗凝固薬を使用されることが多くなってきており、我々の施設でもカテーテルアブレーションを行ったり、デバイスの植込みを行ったりしている多くの症例で、新規経口抗凝固薬を服用されている。そのような方において当科ではこれまで新規抗凝固モニタリングシステムのT-TASを用いることによりアブレーション周術期の新規経口抗凝固薬の効果判定ならびに出血イベントの予測が行なえることを報告してきた(Ito, et al. J Am Heart Assoc. 2016;5:e002744)。この新規抗凝固モニタリングシステムを用いて、アブレーション周術期やデバイス植え込み周術期の至適抗凝固療法の確立を目指して、現在検討を行っている。

(Ito, et al. J Am Heart Assoc. 2016;5:e002744)

 

不整脈グループメンバー

金澤 尚徳(特任講師)

星山 禎 (特任講師)

伊藤 美和(特任助教)

金子 祥三(特任助教)

川原 勇成(大学院生)

鷲見 仁志(大学院生)

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