Research Activity

研究紹介

不整脈グループ

  • 2019.04.1 |

1) 心房細動の機序の解明と至適な治療法の確立

心房細動は主に肺静脈を起源とする異常興奮により引き起こされることが報告されており、肺静脈の隔離術が発作性心房細動に対して極めて有効であることが報告されている。しかしながら時折発作性心房細動症例でも肺静脈隔離のみでは不十分な例も見受けられる。これまで我々は心房細動が一旦発生すると心房内や肺静脈内での興奮伝播がどのようになっているのかをNon-contact mappingシステムを用いることで解析を行なってきた。心房細動は発作を繰り返すことにより心房筋のリモデリングを来たし持続性へと移行していくことが示されており、持続性心房細動では特に肺静脈隔離術のみの治療では不十分であることが示されている。これは持続性心房細動において発作性心房細動とは異なる持続因子が加わって存在していることを示唆しているが、その理由は患者毎に様々であり、どのような機序で持続しているのか、また持続性心房細動に対してどのような治療方法が最も適しているのかについてはいまだ議論が絶えないところである。昨今、心房細動はカテーテルアブレーションによって根治が得られる可能性が増えてきており、肺静脈以外に対する至適治療の確立は非常に重要と考えられる。我々は肺静脈隔離後も持続する心房細動の機序を解明するために心房内の興奮伝播を解析し、肺静脈以外のどのような因子が関連しているかについて検討を行なっている。またこれをもとにした有効なカテーテルアブレーション治療方法の確立を目指し検討を行っている。

2) 心房細動に関連する因子の検討

近年、Pericardial Fatが心疾患と関連していることが報告されているが、我々は心房細動発症においてもPericardial Fatが心房筋の線維化などを介したと推察されるCFAE電位の発生に関連し、心房細動の発生維持に重要な役割を果たしていることを報告した。また心房細動と内皮機能との間にも密接な関連があることが報告されており、我々も心房細動の持続により内皮機能が低下し、かつカテーテルアブレーションにより洞調律に復帰することによって、内皮機能が改善することを報告した。血管内皮機能は心房細動に対するカテ―テルアブレーション治療後の再発の有無の効果判定指標となることも明らとしたが、現在は血管内皮機能以外にも心房細動の再発の予測因子となる指標がないか、また治療において肺静脈隔離では不十分な患者の因子などの解析も行っている。

3) 心房細動アブレーションにより引き起こされる食道潰瘍の予測因子と予防に関する検討

心房細動に対する治療の基本は両側肺静脈隔離であるが、左心房の後方には食道が接して走行しており、通電により食道に傷害を引き起こす可能性が指摘されている。万が一にでも食道左房瘻が引き起こされれば重篤な場合は死亡に至る症例も報告されており、この回避は非常に重要な事項である。現在のところ食道損傷を予測する正確な因子は明らかにされていないが、我々は左房食道間距離を測定し、この距離が短いことがアブレーション術後の食道粘膜障害をきたす最も有用な予測因子であることを報告した。またそういった症例でも食道温プローブを使用しながら通電を行うことで食道傷害のリスクを回避できないか、検討を行っている。

4) 房室弁輪部起源の心房頻拍についての検討

房室弁輪部にはHis束近傍のものを含めて、チャネル感受性の心房頻拍が存在することが報告されているがその詳細なメカニズムは明らかにされていなかった。我々はEntrainment法を用いてこれらの頻拍の機序がリエントリーであり、心房最早期興奮部位の近位部にCaチャネル依存性の必須暖徐伝導路が存在していることを初めて明らかにした。また房室結節近傍起源の心房頻拍において、従来は最早期心房興奮部位が治療の標的部位とされていたが、最早期心房興奮部位は極めて房室結節に近接しており、房室結節に対する傷害を来たすリスクを伴っていた。しかしEntrainment法を用いることにより、必須暖徐伝導路の入口部への通電が可能となり、安全に頻拍の根治が可能であることを示した。これらのCaチャネル感受性を有する房室弁輪部起源心房頻拍の詳細な頻拍回路について、今後も更なる検討を行なう。

5) T-TAS(Total thrombus-formation analysis system)を用いた心房細動症例での抗凝固薬の判定結果

心房細動に対するカテーテルアブレーション周術期の抗凝固療法はこの10年間で大きく変遷した。ワルファリンをヘパリンへ代替していた時代からワルファリンは継続とする時代となり、また新規経口抗凝固薬の登場で更に安全確実な抗凝固療法の検討もされてきている。特に新規経口抗凝固薬は患者毎に適切な用量が決まっているため、そのモニタリングも不要とされてきたが、時折出血性合併症を来す患者もみられるため、我々は新規モニタリングシステムのT-TAS(Total thrombus-formation analysis system)を用いて、アブレーション周術期の新規経口抗凝固薬の効果判定ならびに出血イベントの予測が行なえないか検討を行ってきた。今後は無症候性脳塞栓症の発症状況についてもT-TASを用いて検討を行なっていく予定である。

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