Research Activity

研究紹介

静脈血栓症/腫瘍循環器グループ

  • 2021.06.1 |

1) 静脈血栓症

静脈血栓症の多くは下肢から発生し、肺塞栓を来たすとときに致命的になることがある。われわれは日常臨床で増加傾向にある”がん関連静脈血栓症”に着目し研究を行っている。がん化学療法に伴う静脈血栓症の発症予測評価スコアとしてコラナスコアやウィーンスコアが知られているが、これらの指標は主に欧米で発展してきており本邦の実臨床において実用的な指標となっていない。われわれは27,687人の日本人がん患者におけるコラナスコアの妥当性について報告している。さらに現在、国内のがんセンターとの共同研究にて、「日本人におけるがん関連血栓塞栓症の発症予測評価スコアの確立を目指した多施設共同臨床試験(通称:J-Khorana研究)」を研究代表施設として実行している。

2) 腫瘍循環器

がん化学療法剤の開発・進歩は著しく、分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬の登場と治療レジメンの多様化によって、がん生存期間は延長し、がん経験者は増加傾向にある。cancer therapeutics–related cardiac dysfunction (CTRCD)はがん患者の予後において最も考慮すべきものであり、新たな臨床課題である。とくに心不全の発症は、がん治療完遂後の生命予後と生活の質に大きな損失を与える重篤な合併症である。有症候性の左室不全を発症してからでは心機能の回復は困難な場合が多く、無症候のうちに左室機能異常を早期に検出する検査法が必要である。われわれはCTRCD例における心臓CTと心臓MRIの相同性について報告している(Sueta et al. Eur Heart J Case Rep 2020) (Sueta et al. Circ J 2021)。さらにわれわれはアントラサイクリン系抗がん剤使用後患者の晩期心機能について心臓CTの指標が心エコーの指標と同等に振る舞うことを報告している(Egashira et al. IJC HV 2021)。われわれは現在心臓CTのさらなる有用性を検証するための前向き研究を実施している。

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