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慢性血栓塞栓性肺高血圧症に対するカテーテル治療

  • 2021.06.1 |

肺高血圧症とは

肺高血圧症とは、心臓から肺に血液を送るための血管である「肺動脈」の血圧(肺動脈圧)が高くなることで、心臓と肺の機能障害をもたらす予後不良な進行性の疾患群です。診断には右心カテーテル検査が必要で、平均肺動脈圧が25mmHg以上の時に確定診断となります。

肺動脈圧は、何らかの原因で肺動脈が狭くなり、硬化することで上昇します。原因は多岐にわたり、大きく5群に分類されており(別項参照)、原因によって治療内容が大きく異なります。

肺は大気中から十分な酸素を取り込み、血液中へと運搬します。酸素や栄養分が十分に入った血液を心臓が全身に送り出し、全身の臓器が酸素をもらい活動することで、ヒトは生きることができます。必要な酸素を全身の臓器に送るためには、心臓から出る血液の量を一定以上に保つ必要があります。肺高血圧の状態では、狭くなった血管に無理に血液が流すように心臓が努力することで、肺動脈圧が上昇し、心臓に負担がかかります。肺動脈圧の上昇が持続すると、肺動脈自体が傷み、さらに肺動脈が狭くなったり、硬くなったりするという悪循環に陥り、結果として心臓(特に右心室)に負担がかかり疲弊してしまい、右心不全を引き起こします。これらの病態により、肺高血圧症では動いた時の息切れや、浮腫などが見られ、治療が遅れると死に至る重篤な疾患です。

肺高血圧症の原因

肺高血圧症の原因は大きく分けて以下の通りに分かれます。

 

1.肺動脈性肺高血圧症

2.左心疾患に伴う肺高血圧症

3.肺疾患/低酸素血症に伴う肺高血圧症

4.慢性血栓塞栓性肺高血圧症

5.原因不明

 

この中でも、肺動脈性肺高血圧症・慢性血栓塞栓性肺高血圧症は厚生労働省の指定難病に指定されています。ここ最近で治療方法が大幅に進展してきており、予後の改善が得られています。

慢性血栓塞栓性肺高血圧症について

慢性血栓塞栓性肺高血圧症(chronic thromboembolic pulmonary hypertension:CTEPH)は、器質化した血栓で肺動脈が狭窄・閉塞し肺高血圧症をきたした疾患です。治療としては生涯にわたる抗凝固療法を基本として、下記の通りの治療法があります。

 

1.外科的肺動脈血栓内膜摘除術(当院では施行しておりません)

2.経皮的バルーン肺動脈形成術(Balloon pulmonary angioplasty : BPA)

3.薬物治療

 

BPAはカテーテルという細い管を用いて、肺動脈の狭窄部位を広げる治療です。肺動脈血栓内膜摘除術が行えないような、細い血管に狭窄部位があるCTEPH患者さんに対して施行されてきた治療になります。BPA治療は、現在では低侵襲性かつ大きな治療効果が得られる治療方法になりますが、専門施設は日本の中でも限られています。

当院では2018年にBPAを導入して以降多くの治療実績を重ね、現在BPAの認定実施施設(日本循環器学会)申請を行なっています。本治療により、主症状である運動時の息切れや、予後の改善を大きな目標として、患者様にとってより良い治療となるように最善を尽くすよう今後も努力していきます。

 

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