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重症心不全・LVAD・Impella

  • 2019.10.1 |

重症心不全・LVAD・Impella

我々は熊本県における重症心不全に対応すべく以下のような取り組みを行っています。

重症心不全患者に対する心臓移植および左室補助人工心臓(Left ventricular assist device:LVAD)を用いた治療

心不全とは「心臓が悪いために、息切れやむくみがおこり、だんだん悪くなり、生命を縮める病気」です。心不全の予後は内服薬や不整脈を治療する機器の進歩によって改善してきていますが、残念ながら通常の心不全の治療を行っても十分な治療効果が得られず、心不全の症状が緩和されない状態(重症心不全;治療抵抗性心不全)となる症例もあります。

 

重症心不全には再度心不全の治療の見直しや病態の評価、生活の中で留意するべき事項を確認するなどの心不全指導を行います。しかしそれでも状況がよくならない場合があり、そのような患者様に対しては心臓移植を適応基準に基づいて検討します。

しかしながら、心臓移植は全ての重症心不全患者様が受けられるものではありません。心臓移植の申請においては適応を満たしているか、治療が十分か、家族の理解や協力が得られるかなどの評価が必要です。熊本大学循環器内科では九州で唯一の心臓移植実施施設である九州大学と連携し、熊本の患者様が心臓移植を検討する機会を逸することがないように関連病院と連携しながら重症心不全患者の診療を行っています。

心臓移植は申請者に比してドナーは不足しており、移植までの待機期間が非常に長くなってきています。

そのため移植までの期間を長期的にサポートする、左室補助人工心臓(Left ventricular assist device:LVAD)を大多数の方が使用しています。

この機械はポンプ本体が体内に植え込まれケーブルを通して体外のコントローラーやバッテリーとつながっており、在宅復帰や就業も可能です。しかしながら感染症や機器のトラブル、脳血管障害などの合併症も懸念されます。われわれは2017年11月より「植え込み型補助人工心臓管理施設」としての認定をうけ、熊本のLVAD植え込み患者様が安心して治療ができるように取り組んでいます。LVADは現在「心臓移植への橋渡し」として使用されていますが、今後心臓移植を前提としないLVAD治療(Destination therapy)について議論されており、重症心不全に対するLVAD治療が広がっていくことも予想されます。

経皮的な機械的補助循環 ”IMPELLA”

急性心筋梗塞や劇症型心筋炎などによる急激な心機能障害もしくは慢性の経過で心機能が低下した結果、昇圧剤などの治療を行っても適正な循環が維持できず血圧低下から各臓器への血液循環が不足する状態になることがあります。このような状態を“心原性ショック”と称し、その予後は不良です。

熊本大学循環器内科では心原性ショックに対応するためにIMPELLAというポンプカテーテルを用いた補助循環を行うことで心原性ショック症例に対し治療を行っています。

 

このデバイスは経皮または経血管的に大腿動脈から左心室内に挿入されたカテーテル先端部の吸入部から直接脱血し、カニュラを通じて上行大動脈に順行性に送血するカテーテル式の血液ポンプです。これにより心拍出量を増加させ、左心室の負荷を減らすことが可能です。

従来使用されていた大動脈バルーンパンピング(IABP)と経皮的人工心肺補助装置(V-A ECMO/PCPS)の併用と比較して、肺の補助はできないものの、順行性(経皮的人工心肺補助装置の場合にはポンプからの送血が大腿動脈から心臓へ逆行性の流量補助を行うため左心室の負荷を増やしてしまう)の補助ができることは心保護において有利になります。

我々は心原性ショック症例の成績向上のため、機械的補助循環のメリットを最大限に生かすべく日々治療を行っています。

トランスサイレチン型心アミロイドーシスに対するタファミジスの導入

アミロイドーシスはアミロイド蛋白という変異したタンパク質が臓器に沈着し障害を起こす総称です。熊本大学病院は脳神経内科を中心とした「アミロイドーシス診療センター」を有しており、世界に先駆けてアミロイドーシスの診療・研究を行っている施設です。

心アミロイドーシスは心臓に変異したアミロイド蛋白が沈着することで心臓肥大や心不全、不整脈を来たす心臓病です。30種類以上のアミロイド蛋白が確認されていますが、主に心アミロイドーシスを来たす疾患はALアミロイドーシス、野生型トランスサイレチンアミロイドーシスおよび遺伝性トランスサイレチンアミロイドーシスの3つになります。ALアミロイドーシスは多発性骨髄腫など免疫グロブリンの異常に合併する病気で主に化学療法によって治療する病気であり、血液内科と連携しながら治療を行います。一方トランスサイレチンアミロイドーシスは遺伝性のタイプと加齢に伴って発症する野生型の2つに分けられ、自覚症状や発症年齢、治療内容が異なります。特に野生型トランスサイレチンアミロイドーシスは高齢者に多く見られる病気であり、高齢者心不全の原因の一つと考えられており注目されている疾患です。

トランスサイレチンという蛋白は肝臓で産生され、4つの蛋白がくっついて安定した状態で存在しているのですが、安定感が悪くなりばらばらになってしまうと一つ一つの蛋白が絡み合ってナイロン状のアミロイド線維というものが出来てしまいます。これが心臓に沈着していくことでトランスサイレチン型心アミロイドーシスが進行していきます。

今まではトランスサイレチン型心アミロイドーシスに対する治療薬剤はなく、主に利尿剤による治療を行っていました。しかし2019年3月から熊本大学循環器内科が参加した国際共同治験の結果を基に「タファミジス(商品名:ビンダケル)」がトランスサイレチン型心アミロイドーシスに対して承認されました。タファミジスはこの4つの蛋白がくっついた状態で存在しているトランスサイレチンを安定化させて、ばらばらにならないようにする薬剤です。結果的にアミロイド線維が出来るのを抑制します。

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