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心アミロイドーシスの診断と治療

  • 2021.06.1 |

心アミロイドーシスの診断と治療

アミロイドーシスはアミロイド蛋白という変異したタンパク質が臓器に沈着し障害を起こす病気の総称です。熊本大学病院は脳神経内科を中心とした「アミロイドーシス診療センター」を有しており、世界に先駆けてアミロイドーシスの診療・研究を行っている施設です。

 

心アミロイドーシスは心臓に変異したアミロイド蛋白が沈着することで心臓肥大や心不全、不整脈を来たす心臓病です(図1)。30種類以上のアミロイド蛋白が確認されていますが、主に心アミロイドーシスを来たす疾患はALアミロイドーシス、野生型トランスサイレチンアミロイドーシスおよび遺伝性トランスサイレチンアミロイドーシスの3つになります。ALアミロイドーシスは多発性骨髄腫など免疫グロブリンの異常に合併する病気で主に化学療法によって治療する病気であり、血液内科と連携しながら治療を行います。一方トランスサイレチンアミロイドーシスは遺伝性のタイプと加齢に伴って発症する野生型の2つに分けられ、自覚症状や発症年齢、治療内容が異なります。特に野生型トランスサイレチンアミロイドーシスは高齢者に多く見られる病気であり、高齢者心不全の原因の一つと考えられており注目されている疾患です。また手根管症候群の合併が多いことも特徴の一つです。

トランスサイレチンという蛋白は肝臓で産生され、4つの蛋白がくっついて安定した状態で存在しているのですが、安定感が悪くなりばらばらになってしまうと一つ一つの蛋白が絡み合ってナイロン状のアミロイド線維というものが出来てしまいます。これが心臓に沈着していくことでトランスサイレチン型心アミロイドーシスが進行していきます。

 

今まではトランスサイレチン型心アミロイドーシスに対する治療薬剤はなく、主に利尿剤による治療を行っていました。しかし2019年3月から熊本大学循環器内科が参加した国際共同治験の結果を基に「タファミジス(商品名:ビンダケル)」がトランスサイレチン型心アミロイドーシスに対して承認されました。タファミジスはこの4つの蛋白がくっついた状態で存在しているトランスサイレチンを安定化させて、ばらばらにならないようにする薬剤です。結果的にアミロイド線維が出来るのを抑制します。臨床試験の結果からは心不全による入院や死亡を減少させる効果が示されています。

 

現在本邦において「パチシラン」や「バトリシラン」という新規薬剤が野生型および遺伝型トランスサイレチン型心アミロイドーシスに有用かどうかを評価するための国際共同治験が進行中です。これらの薬剤はトランスサイレチンを産生するmRNAの機能を阻害することで、肝臓から作られるトランサイレチン産生を抑制することにより、血中のトランサイレチン濃度が低下し、アミロイドーシス患者さんの臓器に沈着するアミロイド沈着を抑制します。

 

さらに今後沈着したアミロイドを分解、消去できないか研究が行われています(図2)。

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