Advanced Medical Technology

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パーソナルヘルスレコードや地域医療連携ネットワークシステムなど医療情報技術の応用

  • 2021.06.1 |

パーソナルヘルスレコード(PHR)による病期診断と予防医療

医療やヘルスケアの分野にAIやICTの応用が急速に進む中、治療だけでなく、個々のバイオマーカーや生体情報を用いた健康の増進、発症を未然に防ぐための早期介入を可能とする「先制医療」の実現が目指されています。熊本大学病院循環器内科は、医療情報経営企画部との連携により、導電性の繊維素材シャツを着るだけで安定した心電図を計測できるウェアラブル電極インナーの活用や、心音をデジタル化し可視化する超聴診器などの情報技術の創出、横断的な情報共有のための基盤構築を通じ、臨床研究と基礎研究の密な連携と充実を図っています。また、超高齢社会の到来で蔓延が懸念されている心不全患者を対象に、センサー情報による病期診断や個別化医療(精密医療)の確立に取り組んでおり、「Society 5.0」の社会実装と健康長寿の延伸を目指しています。

まもとメディカルネットワーク(KMN)を利用した広域データ連携

診療録の電子化とICT化が進む一方で、医療圏やベンダー間の規格の違いにより電子情報を連携できない問題はリアルワールドにおける重要な課題です。そのため、医療情報を広域に共有するためのデータの標準化とその連携基盤を通じた利活用の重要性が高まっています。くまもとメディカルネットワーク(以下KMN)は、熊本県や熊本県医師会、熊本大学病院の3者で運営され、熊本県民にとって安心で安全な地域医療・介護環境を提供できるように構築された熊本県版のネットワークです。参加者(患者)の同意のもと、閲覧が許可された利用施設間でのみ患者情報(病歴や処方歴、画像を含む検査情報等の診療情報)や医療介護に関する情報を交換共有できる、いわゆる「オールくまもと」の地域医療等情報ネットワークになります。これまで日本全国に様々な医療情報ネットワークが存在しますが、病院や診療所などの医療機関だけでなく、薬局や歯科、介護関係機関の情報を連携共有できる仕組みは、情報銀行として拡張性を備えた利点があるだけでなく、施設間のみならず多職種での連携強化を図れる稀有な特徴があり、患者を中心とした医療を提供できる先進的な連携基盤モデルとして注目を受けています。熊本県医師会のセンターサーバに貯められた標準化された医療介護情報データを厚生労働省電子的診療情報交換推進事業SS-MIX2ストレージに格納することで、データの二次利用や緊急、災害時のデータ活用としても期待されており、実際に令和2年7月の人吉球磨における豪雨災害においても切れ目のない医療提供に貢献した実績が注目を集めています。熊本大学病院循環器内科は、今後増えることが想定される心不全入院や在宅介護に対し、KMNの利活用と遠隔医療の導入により、コミュニティで健康を守る地域完結型の医療の実践を目指しています。

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