熊本大学病院の東海達也先生（循環器内科）、石井正将講師（医療情報経営企画部）、中村太志教授（医療情報経営企画部）、辻田賢一教授（循環器内科学）らの研究グループは、CLIDASデータベースを用いた研究成果を、AJC（American Journal of Cardiology）誌に報告しました（2025年掲載）。

CLIDAS（Clinical Deep Data Accumulation System）は、日本国内の7つの医療機関（自治医科大学、自治医科大学さいたま医療センター、東京大学、東北大学、九州大学、熊本大学、国立循環器病研究センター）による共同データベースであり、PCI（経皮的冠動脈インターベンション）を施行された患者様の、電子カルテ情報を含む血液検査、心エコー、カテーテルデータ、併存疾患、内服薬、予後情報などを網羅的に蓄積しています。
本研究では、2013年から2019年にPCIを受けた6,457例を対象に、プロトンポンプ阻害薬(PPI)使用と消化管出血（GIB）・長期予後との関連性を検討しました。傾向スコアマッチングおよび逆確率重み付けを用いた解析の結果、PPI使用はGIB発症リスクの有意な低下と関連していました。さらに急性冠症候群(ACS)患者においては、PPI使用がMACEおよび全死亡のリスク低下とも関連しており、メディエーション解析により、その一部がGIBの減少を介した効果である可能性が示唆されました。
この研究は、PCI後のPPI使用の臨床的意義をリアルワールドデータに基づいて明らかにしたものであり、特にACS患者における予後改善への貢献が期待されます。興味のある方は、ぜひご一読ください。

掲載ページ：Proton Pump Inhibitor Use, Gastrointestinal Bleeding Reduction, and Long-Term Prognosis After Percutaneous Coronary Intervention – American Journal of Cardiology

論文名：Proton Pump Inhibitor Use, Gastrointestinal Bleeding Reduction, and Long-Term Prognosis After Percutaneous Coronary Intervention

著者：Tokai T, Ishii M, Otsuka Y, Nakamura T, Tsujita K, Akashi N, Fujita H, Nakano Y, Matoba T, Kohro T, Oba Y, Kabutoya T, Kario K, Imai Y, Kiyosue A, Mizuno Y, Nochioka K, Nakayama M, Iwai T, Miyamoto Y, Sato H, Nagai R.